埋もれかけている狭山市の民話を語り、市民に地域に対する愛着を深めてもらおうと、市内の女性グループ「狭山の民話を広めるプロジェクト」が活動を続けています。
今月9日には公募で集まった市民に、広瀬地区の寺社などを回りながら民話を語る「広瀬民話めぐりウオーキング」を初開催しました。今後は市内各地に活動の場を広げ、多くの人に民話を語る計画をしています。
「むかーし、むかしのことだ。上(かん)広瀬村と下広瀬村にゃあなあ、それぞれによう、お稲荷(いなり)さまがあったんだあ」
広瀬一の松森稲荷神社境内で、プロジェクトのメンバーが方言で抑揚をつけながら「スギモリ稲荷とマツモリ稲荷」を披露すると、集まった25人は民話の世界にひきこまれた様子で真剣に聞き入っていました。
この日は、松森神社を含む4カ所の史跡を巡りながら3.5キロを歩きました。松森神社の近くにある広瀬神社では、日本武尊(やまとたけるのみこと)が狭山に立ち寄り「この景色は私の住む奈良の広瀬に似ており素晴らしい。地名を広瀬にするように」と語ったという民話「ひろせのタケル」を紹介しました。
参加した70代の女性は「生まれも育ちも狭山だけど、こんな面白い話があるとは知らなかった」と感心した様子でした。
プロジェクトを推進しているのは、市内に住む元小学校教諭の小川豊子さん(67)ら女性4人のグループ。小川さんは定年退職後、子ども向けの読み聞かせ活動をしながら、転入者が多いこの土地で、郷土愛を育む方法を模索していました。
そこで見つけたのが狭山を舞台にした数々の昔話。地元の作家らが絵本などにしていましたが、広くは知られていないのが現状です。「語り部として伝えなければ」と決意し、市内で朗読活動をしていた女性らとともに2010年7月から活動を始めました。
当初は、市内のさまざまな文化団体グループの人たちを相手に民話めぐりを実施していましたが、「面白い。さまざまな人たちに伝えるべきだ」と評価されたのを受けて、初めて公募を行いました。
小川さんは「今回の民話めぐりウオーキングに参加した人たちからは『これからも続けて』という励ましをいただいた。手応えを感じている。もっと語り部仲間を増やし、活動を活発化させたい」と意欲を燃やしていました。
ニュースURL>>http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20131115/CK2013111502000149.html